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『今年聖域では、ハロウィン、それに付随する行事等は禁止とする。この令を破った場合、スニオンとする』
そのようなお達しが十二宮入り口に掲示されたのは、10月に入って間もなくの事だった。 シュラは火のついていない煙草をくわえながら、隣を歩いていたアフロディーテに訊ねた。今日はこの顔の綺麗な同僚と飲みに行っていたのである。 「一体、何があったんだ?」 「ああ、去年シュラは居なかったのだよね」 アフロディーテはもの柔らかく笑ってみせる。シュラは眉間に深い皺を寄せると、 「お前だって、俺と共にアブダビに行っていただろうが」 「忘れたのかい?私は翻訳書類を片付けるために、聖域に一時呼び戻されたのだけど?」 アフロディーテの長い睫毛が、やや伏せられる。 その様は息を飲むほど美しかったのだが、シュラはアフロディーテの顔など見慣れていたので、特に何とも思わなかった。 代わりにくわえた煙草を唇の端でぴょこぴょこ振りながら、 「そうだったな。で、何があったんだ」 「それがね……」 アフロディーテは昨年あった事を単純に、しかし要点を押さえて話す。 「去年のハロウィンの日、星矢が教皇の間にお菓子をくれと押し掛けてね……」 「あー……」 間延びした声を上げるシュラ。 ああ、思い出した。 去年はグラード財団がポカをやらかしてしまい、教皇の間は月末の庶務に加えて、その手伝いにも追われていたのだった。 自分もアフロディーテも、書類の手伝いで死にそうになったのを覚えている。 「……あの状況下で教皇の間に行くなぞ、星矢は馬鹿だな」 「主人公だからね」 「誉めているのか、貶しているのか、よくわからんな」 涼しい顔で言ってのける同僚を、チラと見やる。 その、作り物のように綺麗な顔には、特に強い表情は浮かんでいない。 「今年は何も起こらないといいよね」 歌うようにそれだけ言い残したアフロディーテは、いつの間にやら花霞の中に消える。 その場には、煙草をくわえたシュラだけが残った。
by hypermind
| 2016-10-12 00:26
| 小ネタ
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